通訳案内士法の規定では、「通訳案内士は、報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を行うことを業とする。」とされています。
この規定を踏まえ、通訳ガイドの仕事には、以下のポイントがあると考えられます。
1 通訳案内士は、報酬を得て、通訳案内を行うことを業とする。
実態として、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることは、通訳案内士以外も行っています。しかし、報酬を得て、事業として、行うのは、通訳案内士の資格を有している者に限られます。
ボランティア・ガイドで、お客様などから、金銭をいただくことがありますが、あくまで交通費など、実費弁償の範囲内に止まります。
通訳案内士は、アマチュアのボランティア・ガイドと異なり、専門性と責任を要求されます。
2 通訳案内とは、外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいいます。
通訳は、演説や講義、会議等において、話し手のスピーチを他の言語に置き換えることが仕事です。したがって、話し手のスピーチの理解力や、語学力が求められます。
これに対し、通訳案内士がガイドとして、仕事をするときは、語学力に加え、ガイド自身が旅行に関する知識・情報を有する必要があります。
通訳案内(通訳ガイド)をして、外国人旅行者が日本を好きになってくれるとすれば、これはもう立派な民間外交の仕事だと思います。そのためには、単に知識だけでなく、ホスピタリティあふれる態度などの総合力が求められます。
3 資格と登録を要する事業者であること(法3条、18条、29条)
通訳案内士は、事業者です。会社の社員として、案内業務を行うときもありますが、通訳案内士法でいう業とは、独立した事業者です。旅行会社等と契約し、報酬を得て、通訳ガイドを行うもので、個人事業者としての性格が基本です。旅行者に登録証を提示しなければなりません。
通訳案内士法が制定されて以来、60年が経過し、国際観光の状況は、以下のように、大きく変化し、日本を訪問する外国人の通訳ガイドに対するニーズも変化しています。
・中国、韓国などアジアからの観光客の増大(欧米からの観光客とは嗜好が異なる。シンガポール、インド、フィリピンなど、英語によるガイドのニーズもある)
・団体客の比率の減少と海外個人旅行(FIT)など個人、小グループによる訪日客の増加(伝統的な観光地以外の観光地に興味)
・インターネットの発達により、外国から直接、日本の情報を入手する手段が増加(したがって、通訳ガイドには専門性―通常では入手できない情報に基づく案内―が求められる)
・日本の都市における近代建築の増加、各種工業製品やブランドの相互普及など、世界の諸都市の類似化(東京都庁、六本木ヒルズなど現代の日本にも興味)
このような変化のなかにあっても、日本語が欧米などの言語体系と極めて異なることから、訪日外国人の大半が日本語を理解できないことには、変わりがありません。また、一般の日本人の語学能力も必ずしも高くありません。したがって、語学に習熟した通訳案内士への期待は、引き続き大きいと言えます。
ただ、変化する顧客ニーズに対応して、通訳ガイドがどのようなサービスを提供していくかは、通訳ガイド自身が自ら考え、努力していく課題です。